月刊誌「新潮45」の(右から)1月号、2月号、4月号
月刊誌「新潮45」の(右から)1月号、2月号、4月号

社会・カルチャーメディア万華鏡

「新潮45」が示す“多様性”を失った雑誌の息苦しさ

山田道子 / 毎日新聞紙面審査委員

 「新潮45」が「Hanada」になっちゃった!──今年に入ってから新潮社の月刊誌「新潮45」が、(柔らかい表現で言うと)保守系月刊誌「Hanada」や「Will」と似てきた。

 兆しは1月号。「開戦前夜の『戦争論』」との巻頭特集にカリフォルニア州弁護士のケント・ギルバート氏が登場した。記事は「『不戦主義』では平和を守れない」。同氏の新書が昨年の新書ベストセラーだから、売れっ子を使いたくなるのは当然だろう。記事は「政府がメディアに口を出さない日本には、一見すると言論の自由がありますが、メディア側が極めて偏向していて、どうしようもありません」と激しかった。

 2月号の特集は「『反安倍』病につける薬」で、ジャーナリストの櫻井よしこ氏の「『朝日』『NHK』の偏向報道を糾す」と、産経新聞論説委員兼政治部編集委員の阿比留瑠比氏の「安倍政権は『バカ発見器』である」を表紙の見出しにとっている。

 阿比留氏はその原稿で、安全保障関連法案の国会提出が予定されていた2015年2月ごろに安倍晋三首相と話をした際、「今まで常識的な文化人(略)を装っていた人たちが(略)でたらめな安倍批判を繰り広げて『実は私はこんなにバカなんです』とカミングアウトしている」と伝えたと書いている。

柔軟で間口の広さが「売り」だったが…

 連続完売を掲げるHanadaの2月号は「総力大特集 朝日虚報と全面対決!」。Will2月号は「総力特集 カラ騒ぎに終わった『モリ・カケ』朝日報道」。両誌は扇情的な見出しで朝日新聞批判を続けてきた。両誌の後を新潮45が追いかけたようにみえた。

 新潮45の保守ながらとんがっておらず柔軟で間口が広いところが好きで、近年は毎号ほとんど買ってきた。

 タレントのマツコ・デラックス氏は今やテレビの人だけれど、コラムニストとして文章も書ける。サンデー毎日編集長だったとき、新潮45連載の「矢来町心中」を読み、「うちにも書いてほしい」とお願いし、コラムが実現したことがある。

サンデー毎日の連載「うさぎとマツコの往復書簡」(2009年6月28日号)
サンデー毎日の連載「うさぎとマツコの往復書簡」(2009年6月28日号)

 昨年10月号の特集「バブル」は、数あるバブル回顧記事の中で一番おもしろかった。マガジンハウスの「Hanako」創刊編集長の椎根和(しいね・やまと)氏が「日本の消費行動を変えた仕掛け人の黄金の日々」をつづったり……。同3月号では、俳優の中井貴一氏が「撮影現場の『コンプライアンス』狂騒曲」を寄稿。芸能界が規制にしばられて表現活動が制約されていることを憂慮した。

外した? 4月号の特集

 新潮45の変化を残念と思ったのは私だけでないようだ。ネットには「売れるからといって安倍擁護・反韓国でいいのか」「過激な右翼雑誌になってしまった」と嘆く声がある。コラムニストの小田嶋隆さんは「『安倍政権はバカ発見器である』(阿比留瑠比)という記事があるのですが、私ことオダジマは、連載執筆陣の一人であるにもかかわらず、その記事の本文中で『安倍政権を批判するバカ』の実例として名指しにされていたりします」とツイート(3月16日)。小田嶋氏の戸惑いと怒りを感じた。

 新潮45の4月号の特集は「『朝日新聞』という病」。タイミングが悪かった。発売日は3月17日。朝日新聞が同2日朝刊で、森友学園に関する財務省文書が改ざんされていたことをスクープし、安倍政権に対する批判が燃えさかっている時だ。Hanadaなどの“筋金入り”ならともかく“新参者”の新潮45は「外した」印象だった。

2018年3月2日付の朝日新聞
2018年3月2日付の朝日新聞

 保守系論壇誌の雄だった「諸君!」(月刊、文芸春秋)は2009年に休刊。その前年にはノンフィクションライターが集った「現代」(月刊、講談社)が休刊した。売れる記事を載せるという雑誌の考え方は理解している。でも多様性が失われると息苦しい。

 雑誌の「雑」って大切だ。新潮45には、いろんな筆者を発掘してほしい。論もいいけれどノンフィクション、ルポルタージュもお願い、と言いたい。

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山田道子

山田道子

毎日新聞紙面審査委員

1961年東京都生まれ。85年毎日新聞入社。浦和支局(現さいたま支局)を経て社会部、政治部、川崎支局長など。2008年に総合週刊誌では日本で一番歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長を経て15年5月から現職。

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