
相手から伝えられる内容は、聞き方によってまったく変わります。言い換えれば、思いや事実をうまく引き出すには、聞き方が肝要です。
そのいい例がインタビューです。初めて広報の仕事についたある若い会社員が、広報誌の記事を書くためにインタビューをしてみて、いかに聞き方が難しいかを実感したといいます。聞きたいことをあれこれ用意したのですが、話は途中でどんどん違う方に行ってしまい、結局まとまりのないものになってしまったからです。
誰かに話を聞き、それをリポートにまとめることは仕事上よくあります。これには、それなりの心構えとテクニックがあります。自分の失敗談を言えば、駆け出しの記者のころ、年配の学者へのインタビューで、話が始まって間もなくその人の生まれ年を尋ねたところ、近くにいた後輩の先生に「そんなこと記録を見ればわかるじゃないですか」と叱られました。確認のために尋ねたことですが、確かにあとで聞くような話でした。
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川井龍介
ジャーナリスト
1980年慶応大学法学部卒。新聞記者などを経てフリーのジャーナリスト、ノンフィクションライター。実用的な文章技術を説いた「伝えるための教科書」(岩波ジュニア新書)をはじめ「大和コロニー~フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)、「フリーランスで生きるということ」(ちくまプリマ―新書)を2015年に出版。このほか「ノーノー・ボーイ」(ジョン・オカダ著、旬報社)の翻訳をてがける。