くらし保険選びの相談室

「持病あり」53歳女性が迷った割高医療保険の注意点

岩城みずほ / ファイナンシャルプランナー

 A美さん(53)は今年1月に離婚し、その後派遣社員として働き始めました。子供はおらず、年収は約200万円の見込みです。貯蓄が400万円ほどありますが、もし病気で入院した場合などの経済的な負担に不安を抱えています。

引き受け基準緩和型保険とは

 A美さんは、特に治療が長引くといわれているがんや心疾患、脳血管疾患の3大疾病になると仕事を失うリスクがあると考えています。また、高額療養費制度で医療費の自己負担分が一定額に抑えられても、A美さんの収入に対しては負担が大きいため、医療保険の加入を検討しています。ただ持病があり、「引き受け基準緩和型保険」にしか加入できません。どういう基準で保険を選べばよいかと、私のところに相談に来ました。

 引き受け基準緩和型保険とは、持病や入院歴があり契約時の審査に通らない場合でも、告知項目のいくつかに該当しなければ加入できる保険です。告知の基準は保険会社ごとに異なります。そのため、一般的な医療保険より保険料が割高になります。

 A美さんが検討している保険は、保障内容が入院日額5000円、手術給付金1回5万円、1入院の支払限度日数60日(3大疾病の入院は120日)で、保険料が月4726円です。同じ保険会社の一般的な医療保険で同様の保障内容だと、保険料は月3077円です。A美さんの保険料は、約1.5倍です。

保障内容が削減される期間があるケースも

 引き受け基準緩和型保険は、複数の保険会社から販売されています。A美さんには、押さえておくべき2点について、お話ししました。

 1点目は、契約した保障内容が削減される期間が設けられる場合があることです。「支払削減期間」と呼ばれます。通常、契約から1年間は保障内容の一部が50%になります。A美さんが検討中の保険は、当初1年間は保険給付額が50%となり、例えば入院日額は2500円です。

 引き受け基準緩和型の場合、契約から1年以内の請求件数が、一般的な保険に比べて多い実績があるからだそうです。ただ最近は「支払削減期間」を設けない保険会社もあります。引き受け基準緩和型への加入を推奨するわけではありませんが、加入を検討するなら知っておきたいポイントです。

入院の支払限度日数の数え方にも注意

 2点目は、1入院の支払限度日数の数え方です。保険会社によって違いがあります。通常、退院日の翌日から数えて180日を経過し、再び入院した場合は、新たな入院とされます。問題は、180日以内に再び入院した場合です。主に二つのパターンがあります。一般的なのは「2回以上の入院が、同じ病気であるかないかにかかわらず1回の入院とみなし通算する」です。

 例えば、1入院の支払限度日数が60日の場合で、骨折で30日入院し、退院した日の60日後から女性疾患で40日入院したとします。それぞれの入院日数は60日以内ですが、1回目から2回目の入院までが180日を経過しておらず、「1入院」とみなされます。入院給付金は30日+40日=70日のうち60日分です。入院日額5000円の場合、30万円しか出ません。

 もう一つのパターンは、「2回以上の入院が全く別の病気や原因で関連がない場合は、それぞれの入院に給付金を支払う」というものです。上と同様に2回入院した場合、1回目が15万円、2回目が20万円の計35万円の入院給付金が支払われます。

老後に備えた貯蓄を

 A美さんは相談の結果、引き受け基準緩和型保険への加入を見送りました。病気のリスクを心配して保険に入るより、老後に備えて少しでも貯蓄を増やしていく必要があると考えたためです。老後の備えとしては、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用することにしました。

 iDeCoは50歳以上で加入すると、年齢により受け取り開始時期が異なります。現在53歳のA美さんは、62歳から受け取り可能になりますが、税制優遇を受けながら貯蓄を増やせることにメリットを感じました。また会社では契約社員、正社員への登用の可能性もあるそうで、今後は仕事をがんばっていきたいと話していました。

 <「保険選びの相談室」は原則月2回掲載します>

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岩城みずほ

岩城みずほ

ファイナンシャルプランナー

CFP認定者、オフィスベネフィット代表。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年活動。その後セミナー講師、生命保険会社を経て2009年に独立。個人相談のほか、貯めると増やすの車座の会「C(貯蓄)リーグ」、良質なマネーの勉強会「サムライズ」主催。著書に「人生にお金はいくら必要か」(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)などがある。

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