会見を終えて退席する竹内章・三菱マテリアル社長=2018年3月28日、根岸基弘撮影
会見を終えて退席する竹内章・三菱マテリアル社長=2018年3月28日、根岸基弘撮影

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「なぜ辞任しない」三菱マテ社長に質問が集中した理由

編集部

三菱マテリアル子会社の不正調査報告書(4)

 検査データ改ざんなど子会社で不正が多発した三菱マテリアルは、3月28日の記者会見で最終調査報告書を公表し、竹内章社長が役員報酬の全額を3カ月返上するなど、処分も公表した。報道陣から「報酬返上は不正問題の責任の取り方として妥当なのか」「なぜ辞任しないのか」との質問が相次いだ。1時間55分という長時間にわたり行われた会見の模様を詳しく報告する。

 会見では質問した記者12人のうち8人が竹内社長の経営責任について尋ねた。口火を切ったのはテレビ局の記者だった。「なぜ報酬返上なのか。同じようなことが起きた会社で社長が辞任表明したが、そこまでのことではないと考えたのか」と質問した。

 「同じようなことが起きた会社」とは、神戸製鋼所を指す。検査データ不正がグループ内23拠点で明らかになった神戸製鋼では、当時のトップが辞任表明した。

竹内章・三菱マテリアル社長=2018年3月28日、根岸基弘撮影
竹内章・三菱マテリアル社長=2018年3月28日、根岸基弘撮影

 竹内社長は「今回の事態を総合的に検討して、役員間で協議を重ね、取締役会にも付議し処分を確定した。こうした事態を二度と生じさせないことが現経営陣の責任と判断した」と答えた。

「一連の事態を防げなかった」責任の取り方

 通信社の記者は「多数の子会社で長期間不正が行われ、調査に対する隠蔽(いんぺい)もあった。一連の事態を防げなかったご自身の責任をどう総括しているか」と説明を求めた。

 竹内社長は「指摘の通り不適切な事案が発生し、適切に報告されなかったのは事実だ。しかし、それぞれの事象の報告を受けた以降は、三菱マテリアルが適切に対応してきた。究明されたすべての課題を解決し、健全経営に戻すのが責務だ。私が陣頭指揮を執り、全役員が不退転の決意で再発防止策を実行したい」と述べた。

 新聞社の記者は「取締役会で社長の責任を問う声はなかったか」と問いかけた。竹内社長は「役員の間で協議を重ね、取締役会に付議して対応を確定した。そうした指摘はなかった」と話した。

 この記者は「議論が不十分ではないか。これだけ子会社に改ざんが広がっている。グループを統括する本社の社長がなぜ責任を取らないのか。外から見ると不思議に見える」と質問を重ねた。竹内社長は「強い危機感を持って再発防止策を実行することが責務だ」と繰り返すにとどまった。

神戸製鋼トップは引責辞任

辞任を表明し、険しい表情で記者会見する神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長(当時)=2018年3月6日、手塚耕一郎撮影
辞任を表明し、険しい表情で記者会見する神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長(当時)=2018年3月6日、手塚耕一郎撮影

 この新聞社の別の記者も質問の手をあげた。そして「三菱マテリアルの調査が甘く、不正の情報開示も適切でなかった。対応は後手後手だった。竹内社長ら役員に不正を見抜く能力がないのではないか。経営を続けるのが適切なのか」と、より直接的な問いを突きつけた。また、別の新聞社の記者は、「報酬返上で社員や社会に納得感は得られるのか」との質問を投げかけた。

 こうした質問に対し、竹内社長は先の質問と同様の答えを繰り返し、「グループ全体でリスク感度を高める。グループ総力を挙げて対応する」などと述べるにとどまった。

 記者会見で、社長の進退に質問が集中することは時としてある。ただ、社長の責任の取り方にこれだけ矢継ぎ早に疑問が突きつけられることはそうはない。辞任だけが責任の取り方ではないのだが、会見に出た多くの記者が「なぜ報酬返上ですませるのか」との疑問を抑えられなかったのである。

 <「三菱マテリアル子会社の不正調査報告書」は今回で終わります>

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 筆者は今沢真・経済プレミア編集長兼論説委員です。書店やアマゾンなど通信販売でお求めください。

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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