国交省の奥田哲也自動車局長(手前)に調査報告書を提出するスバルの吉永泰之社長=2018年4月27日、藤渕志保撮影
国交省の奥田哲也自動車局長(手前)に調査報告書を提出するスバルの吉永泰之社長=2018年4月27日、藤渕志保撮影

政治・経済自動車不正リポート

「燃費検査で異常値」スバルの測定チームは何をしたか

編集部

スバルの燃費改ざん報告書(1)

 自動車大手、SUBARU(スバル)は4月27日、燃費や排ガス検査のデータを書き換えていた問題に関する調査報告書を国土交通省に提出した。主力車種のフォレスター、インプレッサ、レガシィなど、生産するすべての車種(9車種)で不正が行われ、903台でデータが改ざんされていた。報告書で「極めて悪質」と認定された不正行為がどのようなものか、まず報告する。

スバルの群馬製作所・本工場の正門=2017年4月2日、阿相久志撮影
スバルの群馬製作所・本工場の正門=2017年4月2日、阿相久志撮影

「極めて悪質」と認定された6件の不正

 報告書によると、スバルの群馬製作所(群馬県太田市)の2工場で、2002年ごろからデータ改ざんが行われていた。改ざんはそれ以前に始まっていた可能性があるが、確認できなかった。

 不正は、完成し出荷直前の車の一部を抜き取って燃費や排ガスを測定する検査で行われた。データが記入されたエクセルファイルを、測定担当者が書き換えていた。

 報告書で6件の改ざんが「極めて悪質な不正行為」と認定された。13年8月の燃費測定で、測定設備の操作ミスで「ガソリン1リットル当たり195キロ走行」という、明らかに異常な燃費値が測定された。測定を無効として再測定すべきだが、担当者は数値を「1リットル当たり12.4キロ」と書き換えた。

 16年11月の測定でも「1リットル当たり31キロ」という値が出た。軽自動車でもなければありえない燃費値だ。測定時の操作ミスだったが、担当者は「17.2キロ」と書き換えた。このように本来は無効とすべき測定について、数値を「ねつ造」したものが燃費測定で3件、排ガス測定で3件あった。

「測定技量不足」の指摘を恐れ改ざん

 なぜ、こうした不正が行われたか。それは、工場でデータ改ざんが常態化していたからだ。2工場では過去5年間に、完成車の一部の6939台を抜き取り、排ガスや燃費検査を行った。このうち903台のデータを改ざんしていた。

スバルの吉永泰之社長=2017年12月19日、和田大典撮影
スバルの吉永泰之社長=2017年12月19日、和田大典撮影

 測定検査の結果、データの平均値が基準を上回っていれば問題ない。ところが、検査担当者は個々のデータが基準を超えていなければならないと誤って認識し、基準を下回った場合は書き換えるよう、先輩が指導していた。

 検査は、「シャシダイナモ」と呼ばれる回転ローラー装置の上に完成車のタイヤを載せてエンジンを動かして行う。アクセル操作の巧拙などで測定値にバラツキが出るが、調査報告書は「自らの技量不足や運転ミスを指摘されることを恐れて書き換えを行っていた場合が多かった」と指摘した。

 測定していたのは品質監査課・排出ガス測定係の担当者。2工場で四つの班があり、係長と班長ら全員で23人体制だった。班長らほぼ全員が改ざんに関わっており、係長は班長経験があり、改ざんを知っていた。係長の上司の課長、部長、工場長、役員らは改ざんの実態を知らなかったという。

 16年4月に三菱自動車の燃費不正の問題が発覚した。この後、同僚同士で「燃費測定値の書き換えはまずいのではないか」という話をした担当者が複数いた。ところが、内部通報や上司への相談にはつながらなかったという。

 <次回「「経営責任」で会長兼CEOになるスバル社長の不思議」>

自動車不正リポート

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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