ベストセラーを歩く

自分の命をかけて行動した「大西郷」とは何者か

重里徹也・文芸評論家、聖徳大教授
  • 文字
  • 印刷

 NHK大河ドラマの影響で西郷隆盛がブームになっているが、この人ほどわかりにくい人物は日本史上でも珍しいのではないか。大久保利通は随分と輪郭が明快なのに、西郷は底知れない雰囲気が漂い、そのイメージが一つに収まらない印象を受ける。

 磯田道史の「素顔の西郷隆盛」(新潮新書)が売れているのも、西郷とはどういう人物なのか、端的に教えてほしいと思う読者が多いからだろう。この本はそんな思いに応えるように、俊英の歴史家らしい筆で、簡潔にわかりやすく西郷を描いている。

 まず、西郷を生んだ薩摩の土壌から書き起こされる。ここで印象的だったことを二つ挙げよう。一つは具体的…

この記事は有料記事です。

残り1313文字(全文1591文字)

重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。