藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

テロの傷痕残る「ニース」国際観光地で知る社会の分断

藻谷浩介・地域エコノミスト
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テロ事件の現場となった海岸沿いの遊歩道に供えられた花束(写真は筆者撮影)
テロ事件の現場となった海岸沿いの遊歩道に供えられた花束(写真は筆者撮影)

 2017年5月。平和で賑やかなモナコ公国から、毎時2~3本あるフランス国鉄に乗って20分。ニースにやって来た。2016年7月に起きたイスラム過激派によるテロ事件は、海沿いの歩行者天国に集まった花火見物客を大型トラックでひき殺すというおぞましいものだったが、10カ月を経た現地はどんな感じになっているのだろうか?

 ニース中央駅の次の、ニース・サン・トーギュスタン駅で、通勤客で混み合う電車から降りる。翌朝早くにマドリードに飛ぶため、ニース・コートダジュール空港に近いこの駅の近隣にホテルを予約していた。モナコ駅で荷物預かり所を見つけられなかった教訓で、いったんホテルに荷物を置いた方が良いと考えたわけだ。その後、ニース中央駅まで1駅取って返し、降りたのが19時15分。これから日没までの1時間少々が勝負と、海岸に向けて歩き始めた。

 駅から海岸まで、南方向に1キロ歩くと、東西方向に歩行者専用の商店街が延びていた。まあまあの人通りだが、モナコの雑踏と比べると、ずっと静かに見える。さらに南に3分で、片側3車線の海沿いの大通りまで出た。

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。