「この人、この土地」だから生み出せる一品

石川・白山 幻の唐辛子「剣崎なんば」の辛さと甘み

小高朋子・旅食ライター・カメラマン
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艶めく赤色と、素材を引き立てる鮮烈な風味が特徴の「剣崎なんば」=小高朋子撮影
艶めく赤色と、素材を引き立てる鮮烈な風味が特徴の「剣崎なんば」=小高朋子撮影

 「剣崎なんば」は、石川県白山市剣崎町を中心に戦前から栽培されてきた唐辛子だ。さやが細長くとがっていて、大きいもので15センチほどになる。艶めく赤色と、素材を引き立てる鮮烈な風味が特徴だ。素手で調理すると皮膚が痛くなるほどの刺激的な辛さだが、口にすると辛さの後にほのかな甘みが残り、唐辛子独特の香りがクセになる。

 同町にある剣崎なんばの生産農家・下村正耕(せいこう)さん(71)の畑を訪れたのは、今年5月のことだ。ビニールハウス内には育苗中の苗木が並び、小さな芽を出していた。翌月に植えるのだという。

 剣崎なんばの苗木は寒暖に弱く、水やりにも気を使う。苗木は人の背丈を超えるほど大きく育つが、風で倒れやすく病気にも弱いため大量生産が難しい。一日に何度も畑を見回ることも少なくないそうだ。また、1株になるさやの数は200本程度だが、出荷に適する真っすぐに整ったさやは50本ほどしか収穫できないという。

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小高朋子

旅食ライター・カメラマン

1982年、神奈川県生まれ。アパレル業界、映像製作会社を経て、フリーランスに。持続可能なモノづくりの可能性を求めて各地を巡り、地域の食文化、工芸品、産業などを取材し、写真、映像も用いてその魅力を紹介している。現在、農業者向けのビジネススクール(オンラインアグリビジネススクール)にかかわり、各地の農業現場の取材を担当。旅と、おいしい食べものと日本酒が何よりも好き。