藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

東ティモール 独立までの苦難と今は平和なディリの街

藻谷浩介・地域エコノミスト
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夕涼みするディリの人たち。豊かな国ではないが人々の表情には曇りがない(写真は筆者撮影)
夕涼みするディリの人たち。豊かな国ではないが人々の表情には曇りがない(写真は筆者撮影)

 シンガポールから豪州のダーウィン経由でたどり着いた、東ティモールの首都ディリは、山と海に挟まれて細長く伸びる田舎町だった。南半球なので5月は晩秋にあたるが、赤道に近い当地には容赦なく灼熱(しゃくねつ)の陽光が降り注ぐ。およそ近代産業もなさそうなこの国、というかこの島は、いかなる理由で独立するに至ったのか。静けさに満ちたホテルでゆっくり仮眠の後、15時から探索を開始した。

 ディリは首都なのだが、中心部で目につく建物といえば、海岸沿いに建つコロニアル建築の国会議事堂くらいだ。おそらくポルトガル支配時代の政庁ではないかと思うが、その裏手に、東ティモール抵抗記念館があった。新興国家には必ずある、国家統合のシンボルたるモニュメントにこれまで出くわしていないが、この地味な建物がそうなのかもしれない。普段は博物館に足の向かない筆者だが、入ってみる。

 入館は無料で、展示スペースも広くはないが、なぜこの国がポルトガル、次いでインドネシアからの独立を願い、どのような経過でそれを果たしてきたのかということを、ビジュアルにわかりやすく説明してある。写真や流されているビデオにはショッキングなものもあるが、それでも数ある中から、比較的扇情的ではないものを選んだ感じだ。

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。