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「君臨すれども統治せず」豪商の枠を超えた住友家

森岡浩・姓氏研究家
十五代目住友友純が建物を寄贈した大阪府立中之島図書館=1952年7月撮影
十五代目住友友純が建物を寄贈した大阪府立中之島図書館=1952年7月撮影

 20年以上前のことだが、京都・洛東を歩いていたとき、急な雨に降られて近くにあった博物館に飛び込んだことがある。そこで青銅器と銅鏡の展示を見たのだが、そのあまりにも充実したコレクションに圧倒された。それが京都・鹿ケ谷(ししがたに)にある泉屋(せんおく)博古館である。重要文化財級と思われる鏡が所狭しと並べられていたが、これらを収集したのが大坂の豪商の住友家だ。

 泉屋博古館の膨大なコレクションは、主に、明治から昭和の住友家当主十五代目や十六代目が収集した美術品で、中心となる中国の青銅器のコレクションは世界的にも知られている。「泉屋」とは、住友家の屋号・泉屋(いずみや)を音読したもので、「博古」は古代中国の青銅器図録「博古録」にちなんでいる。2002年には東京・六本木にも分館ができている。

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姓氏研究家

1961年、高知県生まれ。早稲田大学在学中に独学で姓氏研究を始める。文献調査やフィールドワーク、統計を用いた実証的手法を用いる。2017年4月からNHK「人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!」に出演。著書、多数。