「この人、この土地」だから生み出せる一品

石窯と砂で焼き上げる香ばしさ 練馬の「東京麦茶」

小高朋子・旅食ライター・カメラマン
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川原製粉所の「東京麦茶」の丸つぶと麦茶=小高朋子撮影
川原製粉所の「東京麦茶」の丸つぶと麦茶=小高朋子撮影

 夏の暑い日には、よく冷えた麦茶が体に染みわたる。東京都練馬区にある川原製粉所では、先々代から受け継がれてきた「砂窯焙煎(ばいせん)」で麦茶を製造している。絶妙な煎り加減には職人の高い技術が要求されるため、今ではこの製法を実践するところは少ない。同社がブランド化した「東京麦茶」は、大麦の香ばしさに、ほのかな甘みと苦みを感じる。

 厳しい暑さが続く日でも、川原製粉所では昔ながらのレンガ造りの石窯に火を入れる。カマボコ型の石窯内部では、熱せられた砂が横向きで回転する円筒の内外を行き来している。大麦を砂の中に通し焙煎することで、石焼き芋と同じようにふっくらと仕上がるという。また、レンガの蓄熱と遠赤外線で、大麦の中までじっくりと火を通すことができる。焙煎後の大麦は約2倍の大きさに膨らんでいた。

 大手メーカーではムラなく安定的に大量の大麦を煎るために、熱風焙煎が多用されている。しかし同社の砂窯焙煎では、大麦の表面をカリッと焼き上げる一方で、内部の煎り具合に強弱をつけ、煎りムラのバランスをよくすることで、強い香りを残し、ほのかな甘みと苦みのある複雑で深みのある味に仕上がる。

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小高朋子

旅食ライター・カメラマン

1982年、神奈川県生まれ。アパレル業界、映像製作会社を経て、フリーランスに。持続可能なモノづくりの可能性を求めて各地を巡り、地域の食文化、工芸品、産業などを取材し、写真、映像も用いてその魅力を紹介している。現在、農業者向けのビジネススクール(オンラインアグリビジネススクール)にかかわり、各地の農業現場の取材を担当。旅と、おいしい食べものと日本酒が何よりも好き。