藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

「レバノン」歴史の重みの中に生きる人々のストレス

藻谷浩介・地域エコノミスト
  • 文字
  • 印刷
左はモスク、右はキリスト教・マロン派の教会、手前は古代遺跡。レバノンを象徴する光景(写真は筆者撮影)
左はモスク、右はキリスト教・マロン派の教会、手前は古代遺跡。レバノンを象徴する光景(写真は筆者撮影)

 地中海沿いのご機嫌なリゾート都市、であるかのように見えたベイルート。しかし撮影禁止の建物が随所にあるなど、多年の紛争の傷は癒えていなかった。2月末でこの暖かさなのに、寒い欧州からの観光客もあまり見かけない。現在のたまさかの安寧の先に待つのは、経済的繁栄の復活か、はたまた宗教的混迷の再現なのか。

 超モダンなショッピングセンターがあったので、入ってみる。デザインセンスのいい建築で、緑の映える屋上庭園の池には奇麗な錦鯉(にしきごい)が泳いでいた。ファストファッションのZARA、MANGO、H&Mなど、おなじみの欧州系チェーン店が入居し、イタリアン&ジャパニーズという看板を掲げるレストランもあった(実態はすしも置いているピザ&パスタ屋という感じ)。しかし客数は少ない。つかの間のアラブの春に続いたシリア内戦で、足をすくわれ気味という感じだろうか。

 そこからさらに東北東の都心方向に歩いて30分余り。ようやく「エトワール(星)広場」までやってきた。両大戦間のフランス委任統治時代の街並みが残る一角で、「中東のパリ」といわれた面影が残っている。しかし建物は空き家になっているところが多いようで、道に設営されたオープンカフェにも人はいなかった。北隣の区画には、伝統的なスーク(市場)を近代的なオープンモールに造り替えた「ベイルートスーク」があったが、こ…

この記事は有料記事です。

残り2602文字(全文3176文字)

藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。