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米国の「イラン制裁強化」で中国・サウジが漁夫の利?

会川 晴之・毎日新聞北米総局特派員
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トランプ米大統領=2017年11月6日(代表撮影)
トランプ米大統領=2017年11月6日(代表撮影)

 トランプ政権は5月、米英仏独中露とイランが2015年7月に結んだ核合意を「米国にとって不利な合意だ」として一方的な離脱を宣言した。8月から段階的に制裁を強化し、イランとの貴金属取引や主要輸出品のカーペットやピスタチオ、キャビアなどの購入を禁じた。

 さらに11月4日からは、イラン産原油禁輸や金融取引停止に対象を拡大する。この措置を、米国企業だけでなく国際社会すべてに迫っている。すでに国務省、財務省高官を欧州や、日本などに派遣、「制裁に例外規定はない」と、米国企業以外であっても制裁措置に違反した場合には2次制裁を科すと圧力をかけている。

 一方、欧州連合(EU)、日本は、イランの核兵器開発を止めるためには「核合意が最も有効な手段」との思いが強い。約2年に及ぶ難交渉を経て結ばれただけに、米国内でも核合意維持を支持する声もある。カントリーマン元米国務次官代行(核不拡散・軍備管理担当)は取材に「米国が離脱する道を選べば合意は崩れ、状況はさらに悪化してしまう」と懸念する。「核合意の内容を上回る協定を結ぶ交渉は現実的には難しい」との声もある。

 だが、企業から見れば「リスクを最小限化したい」との思いは強い。欧州企業は、石油・ガス投資や自動車生産、航空機ビジネスの撤退を相次いで決めた。テヘラン便を9月から運航停止に踏み切ると表明した航空会社も出ている。日本でも三菱UFJ銀行やみずほ銀行が、イランとの金融取引の停止に踏み切る方針を決めたほか、イラン産原油を輸入する石油元売り大手も対応に追われる。

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会川 晴之

毎日新聞北米総局特派員

1959年東京都生まれ、北海道大学法学部卒、87年毎日新聞入社。東京本社経済部、政治部、ウィーン支局、欧州総局長(ロンドン)、北米総局長(ワシントン)などを経て、2018年12月から現職。日米政府が進めたモンゴルへの核廃棄計画の特報で、11年度のボーン・上田記念国際記者賞を受賞。日本発の核拡散を描いた毎日新聞連載の「核回廊を歩く 日本編」で、16年の科学ジャーナリスト賞を受賞。著書に「核に魅入られた国家 知られざる拡散の実態」(毎日新聞出版)。