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「現金安売り掛け値なし」日本一の豪商になった三井家

森岡浩・姓氏研究家
明治初期の三越呉服店=東京・日本橋、撮影日不詳
明治初期の三越呉服店=東京・日本橋、撮影日不詳

 江戸時代以降、多くの豪商・財閥が誕生した。中でも巨大な財閥といえば、三菱財閥の岩崎家、住友財閥の住友家、三井財閥の三井家の3家であることは間違いない。今回は、江戸時代に日本一の豪商になった三井家を紹介する。

豪商が2~3代で没落する理由

 江戸時代の豪商の多くは2~3代で没落した。理由は将軍家や大名家との結びつきだ。最も手っ取り早く豪商に成り上がる方法は、時の権力者と結びついて御用商人(政商)となることだった。しかし、三井家は政商としてではなく、庶民相手の商売で豪商となっていった。

 まず、政商が没落しやすい理由を説明する。江戸時代も中期以降になると、各藩は殖産興業に力を入れ始めた。しかし、武士が直接商売をすることはなく、政商を選定して藩の貿易を一手に引き受けさせていた。政商になると、販売に専心するだけで莫大(ばくだい)な利益が上がった。政商は、その利益の一定の額や割合を藩に納めていた。

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姓氏研究家

1961年、高知県生まれ。早稲田大学在学中に独学で姓氏研究を始める。文献調査やフィールドワーク、統計を用いた実証的手法を用いる。2017年4月からNHK「人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!」に出演。著書、多数。