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貿易戦争で米中が発動した「ドーピング政策」の悪夢

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト

 中国が、積極財政に転じるという。米中貿易戦争で、しばらくは関税率の引き上げ合戦を覚悟しなくてはいけないからだ。米国向けの輸出減の痛みに耐えるために、仕方なく過剰債務の整理には目をつぶって、不健全な企業を延命させる財政拡張に踏み切ることになる。これは危険な選択だ。

米国は先に減税して保護主義へ

 トランプ大統領は、鉄鋼・アルミニウムの関税率の引き上げに動く手前で、すでに大減税を2018年1月から実施している。保護貿易は、鉄鋼などから対中国向けの貿易、もしかすると今後は自動車・自動車部品へと広がるかもしれない。

 関税率を引き上げられた国は、当然報復関税を実施するから、米国ともども輸出入が減って景気が悪くなる。トランプ大統領は、それを百も承知でやっている。

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。