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芥川賞「送り火」 理不尽な暴力の向こう側に何が

重里徹也 / 文芸評論家、聖徳大教授

 街を歩いていても、満員の通勤電車で立っていても、夜に居酒屋で酒を飲んでいても、突然に暴力が噴出する予感にかられることがある。誰か知らない人が急に刃物を出して暴れるのではないか、ビール瓶で殴り合いが始まるのではないか、網棚のカバンが爆発するのではないか。

 暴力の予感は「他者」だけではない。正直に白状すると私自身の内にも、うずくような衝動を感じることがある。

 幸いにテロに出くわすことも、自分が暴力の当事者になることも、今のところない。酒場ではみんな和気あい…

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重里徹也

重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。

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