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霊園経営の必須条件は「持続する」「死の尊厳を守る」

長江曜子・聖徳大学教授
米フロリダ州マイアミの家族墓。聖家族の彫刻がほどこしてある=1996年、筆者撮影
米フロリダ州マイアミの家族墓。聖家族の彫刻がほどこしてある=1996年、筆者撮影

 私が1988年から毎年夏に参加した「全米墓園協会大学」(※)には、アメリカ全土、カナダ、南米から約100人の受講生がやってきていた。一方、アジアから来ているのは当時私1人である。

 初年度はお墓のセールスとマーケティングのコースを受講した。いわゆる普通の営業だけではなく、市場調査のカリキュラムがセットになっている。将来予測こそ、破綻が許されない霊園経営の基礎なのである。「暗闇に歩いて行くのは愚かだ」という考え方をたたき込まれたのだった。

 2年目には、アカウンティング・財務管理、会計学コースを受講した。国土の広いアメリカ合衆国では霊園は株式会社による経営が多く、永代使用が主だった。使用者から得る永代使用料の一部を、墓地管理基金として積み立て、修繕費用や管理棟の建て替え費用に充てていた。またその資金を安全に運用し、原資をいかに増やすかという、現実的なカリキュラムが組まれていた。

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聖徳大学教授

1953年茨城県生まれ。加藤組・石匠あづま家社長。明治大大学院・共立女子大大学院博士課程修了。家業の石材店を経営するかたわら、世界45カ国を回りお墓の比較研究を行う。日本における墓地と葬送研究の第一人者として、日本葬送文化学会会長を長く務めた。現在、聖徳大学生涯学習研究所長を務める。「21世紀のお墓はこう変わる」(朝日ソノラマ)、「臨終デザイン」(明治書院)など著書多数。