世界のお墓 フォロー

火葬率99%の日本ではわからない宗教と埋葬の関係

長江曜子・聖徳大学教授
イタリアでは宗教上の復活思想のため10年後にお墓を掘り返し、遺骨を小さな棺に入れて壁型墓地に埋葬する=イタリア・フィレンツェの壁型墓地で
イタリアでは宗教上の復活思想のため10年後にお墓を掘り返し、遺骨を小さな棺に入れて壁型墓地に埋葬する=イタリア・フィレンツェの壁型墓地で

 葬送文化を読み解くには、宗教と埋葬の関係に着目する方法がある。

 日本の火葬率は、99.9%。日本は世界一の火葬大国である。一方、カトリック系の諸国では、宗教上の理由から遺体保存にこだわり、火葬率が低い傾向がある。肉体を伴った復活を遂げるために、遺体の保存は重要である。

 西欧世界と一部アジアでは、火葬に遺族の立ち会いはなく、収骨もしない。焼骨は、鉄の玉か大理石の玉を入れて砕き、一種の粗みじんにして、骨つぼに入れて引き取られるか、遺族のもとへ郵送される。砂状に砕かれた骨では、復活のイメージとはつながらない。

 2015年の火葬研のデータによると、火葬は、イタリアでは18.4%、フランスで34.1%、スペイン41.8%、ベルギーで54.0%程度である。チェコのみ例外的に85.8%と高い数字である。1963年にローマ法王が「火葬した後でも復活には支障がない」と宣言したが、その後も増加する気配はない。

この記事は有料記事です。

残り1367文字(全文1768文字)

聖徳大学教授

1953年茨城県生まれ。加藤組・石匠あづま家社長。明治大大学院・共立女子大大学院博士課程修了。家業の石材店を経営するかたわら、世界45カ国を回りお墓の比較研究を行う。日本における墓地と葬送研究の第一人者として、日本葬送文化学会会長を長く務めた。現在、聖徳大学生涯学習研究所長を務める。「21世紀のお墓はこう変わる」(朝日ソノラマ)、「臨終デザイン」(明治書院)など著書多数。