
2003年8月20日、北米で運行している大手鉄道会社の本社にあるコンピューターシステムがウイルスに感染し、信号管理システムが午前1時15分からシャットダウンしてしまった。ミシシッピ川以東の23の州をまたぐ同社の鉄道システム全体に影響が一時及んだ。
当時、「ブラスター」と呼ばれるこのコンピューターウイルスは世界中で猛威をふるっていた。米セキュリティー企業シマンテックによると、このウイルスに感染したコンピューターの数は全世界で42万3000台以上にのぼる。
コンピューターソフトウエアの弱点を突いて侵入し、自分で自分をコピーして自己増殖していくため、ネズミ算式に感染するコンピューターが増えていく。北米の航空会社のチェックインシステムも、このウイルスへの感染が原因で一時止まってしまった。
この記事は有料記事です。
残り1158文字(全文1503文字)
投稿にはログインが必要です。
松原実穂子
NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト
早稲田大学卒業後、防衛省で9年間勤務。フルブライト奨学金により米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で修士号取得。その後、米シンクタンク、パシフィックフォーラムCSIS(現パシフィックフォーラム)研究員などを経て現職。国内外で政府、シンクタンクとの意見交換やブログ、カンファレンスを通じた情報発信と提言に取り組む。