藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

侵略の歴史を超えてきた「キエフ」に見た一筋の光

藻谷浩介・地域エコノミスト
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独立広場を見下ろす丘にある親露政権への抗議行動で命を落とした若者たちの記念碑(写真は筆者撮影)
独立広場を見下ろす丘にある親露政権への抗議行動で命を落とした若者たちの記念碑(写真は筆者撮影)

 スターリン支配下のウクライナで、500万人を超える犠牲者を出したホロドモール(大飢饉)。その記念館を出た筆者は、南へ5分ほど歩き、世界遺産ペチェールシク大修道院に着いた。キエフ都心から南東に4キロ、ドニエプル川に面した丘の上から川へと下る斜面にかけて、数十の建築物が集まる東方正教会の聖地だ。

 この修道院の開基は1051年、同じく世界遺産の宇治平等院鳳凰堂の創建と同時期である。拝観料は120円だが、写真撮影には、別途許可証を800円で購入しなければならない。素直に支払って門をくぐる。豪華絢爛(けんらん)な伽藍(がらん)の中でもひときわ目を引くのが、高さ100メートル近い大鐘楼だ。200円の別料金を払い、階段をぐるぐる上ると、正面に黄金の屋根のウスペンスキー大聖堂、その向こうにドニエプル川が一望できた(10月15日、ウクライナ・キエフ編<1>で写真掲載)。

 11世紀のキエフは、キエフ大公国の首都として、「ルーシ」と呼ばれた東スラブ人(現在のウクライナ人、ロシア人、ベラルーシ人など)の中心拠点だった。同時期に、今日同じく世界遺産に指定されているソフィア大聖堂が、キエフの都心に創建されている。ちなみにそちらの名物も、高さ80メートル近い大鐘楼だ。

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。