ベストセラーを歩く

SNSの茶番劇 本谷有希子「静かに、ねぇ、静かに」

重里徹也・文芸評論家、聖徳大教授
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 インターネットの最も厄介な性格は、それによってできるバーチャルな空間が、人間にとってけっこう居心地のいいことである。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)であれば、好きなことだけ発信し、気に入った人とだけ付き合えばいいし、気に食わない言葉は消してしまえばいい。

 ネット依存症は深刻な問題だが、ネット空間の居心地の良さがある限り、なくならないだろう。むしろ、技術が進めば、さらに快くて、深くて、没入できる仮想空間をつくることだってできるだろう。

 その時に人間は現実に向き合う力をどのように保てばいいのだろうか。現実の問題はすべて人工知能(AI)…

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重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。