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給料が下がる「生涯現役社会」ではデフレ脱却できない

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト

 まもなく平成が終わる。思えば平成時代の大半は、右肩下がりだった。良い時期は短くて、悪い時代が長く続く。それを象徴するのが給与水準の変化であろう。「物価」のデフレの正体は「給与」のデフレであり、そこには高齢化すると給与が下がるのが当たり前だという通念があったと思う。

勤労者の平均年齢は毎年上昇

 経済分野では、2014年ごろから賃上げが再開されて、勤労者の所得が上向いてきたという認識が主流である。確かに、変化率という面では1人当たりの給与が下がっていくトレンドに歯止めがかかった。

 しかし、勤労者全体の構成変化をみると、高齢化が進み、毎年平均年齢が上がっている。国税庁「民間給与実態統計調査」によると、16年の勤労者の平均年齢は46.0歳である。勤労者の中では、給与水準の高いシニア層がリタイヤしていき、給与水準の低い新卒者が入職してくる。一度退職した女性や高齢者が再就職しても、その給与水準は下がってしまう。だから平均給与は下がりやすい。

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。