名家のルーツ

400年続く名古屋の名家「松坂屋百貨店」の伊藤家

森岡浩・姓氏研究家
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上野松坂屋付近の航空写真=撮影日不詳
上野松坂屋付近の航空写真=撮影日不詳

 名古屋の老舗百貨店「松坂屋」で創業家一族として最後の社長を務めた伊藤次郎左衛門祐洋(すけひろ)氏が今年7月2日、85歳で亡くなった。「伊藤」と「祐洋」の間に「次郎左衛門」という名乗りが入るあたりに、名家としての歴史があることがわかる。

 祐洋氏は、東海経済界の雄として君臨した松坂屋を経営した伊藤家17代目の当主で、1980(昭和55)年に社長に就任した。ところが、85年に「お家騒動」が勃発、祐洋氏が会長になることで収束したが、以後伊藤家の当主は松坂屋の社長に就任していない。松坂屋自体も、2007年に大丸と経営統合を発表し、10年には大丸松坂屋百貨店となった。

 松坂屋の歴史は400年以上に及ぶ。先祖は織田信長に仕えていた伊藤蘭丸祐広(すけひろ)で、天正元(1573)年に河内若江城(東大阪市)の三好義継征伐に従軍して戦死した。

 三井家や鴻池家など江戸時代の豪商には武士の末裔(まつえい)が多い。祐広の遺児、祐道(すけみち)は縁戚関係にあった美濃国久々利(岐阜県可児市)の領主、千村良重に養育された。このあたりも、山中鹿介(講談では鹿之介)の遺児で大叔父に育てられたという鴻池家の起こりとよく似ている。

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森岡浩

姓氏研究家

1961年、高知県生まれ。早稲田大学在学中に独学で姓氏研究を始める。文献調査やフィールドワーク、統計を用いた実証的手法を用いる。2017年4月からNHK「人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!」に出演。著書、多数。