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「中距離核戦力」めぐる米露の思惑と日本の微妙な立場

会川 晴之・毎日新聞北米総局特派員
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トランプ米大統領(左)とロシアのプーチン大統領=2018年7月16日、高本耕太撮影
トランプ米大統領(左)とロシアのプーチン大統領=2018年7月16日、高本耕太撮影

 トランプ米大統領は10月20日、東西冷戦時代に旧ソ連と結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約から一方的に離脱すると表明した。米露両国は今後、首脳会談でこの問題を協議する予定だが、折り合えるかどうかは見通せない状況にある。

 トランプ氏は、理由として、ロシアが条約に違反するミサイルの配備を進め、米国の再三にわたる抗議にもかかわらず改める行動を取らないこと。さらに、戦略上の競合国と位置づける中国が中距離ミサイルの整備・拡充を続ける中、INF条約から抜けて同様のミサイルを整備する必要があると説いた。

 INF条約は、レーガン米大統領とソ連のゴルバチョフ共産党書記長が1987年12月に署名し、翌年発効した。双方に射程500~5500キロの地上発射型弾道・巡航ミサイルの配備、実験を禁止した。

 ただ、米ソ両大国が合意すれば、国際政治の問題が解決する時代は遠のいた。世界は多極化の時代を迎え、中国やインド、パキスタンなどのほか、北朝鮮やイランなど30前後の国が中距離ミサイルを保有する。現状では、条約に縛られる米露両国だけが、中距離ミサイルを保有できない状態にある。INF条約離脱論者のボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、条約を「冷戦時代の遺物」と切り捨てるのは、こうした背景があ…

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会川 晴之

毎日新聞北米総局特派員

1959年東京都生まれ、北海道大学法学部卒、87年毎日新聞入社。東京本社経済部、政治部、ウィーン支局、欧州総局長(ロンドン)、北米総局長(ワシントン)などを経て、2018年12月から現職。日米政府が進めたモンゴルへの核廃棄計画の特報で、11年度のボーン・上田記念国際記者賞を受賞。日本発の核拡散を描いた毎日新聞連載の「核回廊を歩く 日本編」で、16年の科学ジャーナリスト賞を受賞。著書に「核に魅入られた国家 知られざる拡散の実態」(毎日新聞出版)。