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平野啓一郎「ある男」良質の探偵小説のような楽しみ方

重里徹也 / 文芸評論家、聖徳大教授

 平野啓一郎の「ある男」(文芸春秋)は質のいい探偵小説のような楽しみ方ができる長編小説だ。謎解きの面白さがあり、人間模様が味わえ、社会のありようについても考えをめぐらせることができる。そして、自分自身の人生についても、ついつい振り返ったり、思いをはせたりしてしまう。

 物語はまず、宮崎県S市で文房具屋を営んでいる女性のことから書き起こされる。横浜で結婚したが、2歳の次男を病気で亡くした後、離婚して帰郷し、実家の後を継いだのだ。彼女は宮崎で知り合った男と再婚し、幸せに生活していた。

 2人の間には子供もできた。前夫との子も、新しく生まれた娘も、父親に懐いていた。ところが、林業に励ん…

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重里徹也

重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。

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