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母親たちの不安をあおる「教育自己責任論」

藤田結子・明治大商学部教授
県立中学校の入学試験に臨む受験生=2016年1月9日
県立中学校の入学試験に臨む受験生=2016年1月9日

 「ワンオペ育児」が流行語大賞にノミネートされたのがちょうど1年前。この言葉は、ブラック企業の「ワンオペ」労働が、母親たちの家事・育児とそっくりなことから、当事者の母親たちを中心にネット上で広がりました。

 そして今、もう一つの問題が浮かび上がっています。それは、「徹底育児(intensive mothering)」。米国の社会学者のシャロン・ヘイズが名付けました。「母親たちに膨大な時間、エネルギー、お金を子どもにつぎこむよううながす子育てモデル」です。

 アメリカなど先進国特有の現象ですが、日本の母親たちにもそんな状況がみられます。日本はアメリカと比べても、母親に求められる子育てレベルは質・量ともに尋常ではないといわれています。

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明治大商学部教授

東京都生まれ。慶応義塾大を卒業後、大学院留学のためアメリカとイギリスに約10年間滞在。06年に英ロンドン大学で博士号を取得。11年から明治大学商学部准教授、16年10月から現職。専門は社会学。参与観察やインタビューを行う「エスノグラフィー」という手法で、日本や海外の文化、メディア、若者、消費、ジェンダー分野のフィールド調査をしている。