
日本人の2人に1人はがんになり、がん患者の3人に1人は働く世代。「治療と仕事」を両立させていくことは家庭や職場にとって大きな課題となっている。
波平から島耕作へ
磯野波平と島耕作――。がん専門医で東京大学准教授の中川恵一さんは、日本社会の「がんと仕事」の関係の変化を人気漫画の登場人物で例える。
高度成長期まで原作が連載された長谷川町子作「サザエさん」に登場する磯野波平は54歳。当時の定年55歳の一歩手前だ。一方、1980年代にスタートした「課長島耕作」シリーズの主人公、島耕作は作者の弘兼憲史さんと同世代の設定で71歳になった今も現役だ。
男性のがん罹患(りかん)率は50代までは8%だが、70代まででは41%にはね上がり、生涯では62%。中川さんは「かつてのがんは『定年後』の話だったが、今や治療と仕事は切り離せない」と話す。特に女性は就業率が伸びているうえ乳がん患者も増えている。50代までのがん罹患率は男性より高く、深刻さを増す。
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渡辺精一
経済プレミア編集部
1963年生まれ。一橋大学社会学部卒、86年毎日新聞社入社。大阪社会部・経済部、エコノミスト編集次長、川崎支局長などを経て、2014年から生活報道部で生活経済専門記者。18年4月から現職。ファイナンシャルプランナー資格(CFP認定者、1級FP技能士)も保有。