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増税効果吹き飛ぶ「官邸・財務・経産」バラマキの不毛

エコノミスト編集部
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 新天皇即位、改元、そして消費増税とイベントが目白押しの2019年。なかでも、景気を左右しそうなのが、消費増税をめぐる動向だ。週刊エコノミスト12月25日号の巻頭特集「日本経済総予測2019」よりダイジェストでお届けする。【坂田拓也・ライター】

みりん風調味料は8%、みりんは10%

 安倍晋三首相が10月15日に消費増税を実施すると明言した後、「軽減税率」「ポイント還元」「商品券」と、増税対策が次々と打ち出されているが、小売店や飲食店では困惑や反発は広がるばかり。飲食料品の税率を8%に据え置く軽減税率の実施は早々に決まったが、歓迎する声ばかりではない。

 東京都練馬区などで生鮮食品店を4店営業するスーパー・アキダイ。店頭に並ぶ生鮮食品は軽減税率の対象だが、秋葉弘道社長はこう話す。「全体が10%に上がるので、家計の出費は増える。日常品を買い控えれば、ウチも厳しくなる」

 軽減税率は複雑怪奇との批判もある。スーパーで飲食料品と共に並ぶお酒やペットフードは対象外。「みりん風調味料」は対象だが、酒税法で酒類に当たる「みりん」は対象外。店内で食べれば10%だが、持ち帰れば8%だ。

 「国税庁が公式サイトに掲載している軽減税率の解説(Q&A)の問答数(個別)は102問に達する。まるでクイズ」(地銀幹部)

 クレジットカードや電子マネーを使えば、2%をポイント還元する9カ月間限定の対策は、キャッシュレス決済の普及という目的もある。11月半ばに、首相が還元率を「5%に引き上げる」と発言して、混乱に拍車を掛けた。

 
 

 東京都大田区を中心に3店展開する衣料品店。数百円からの格安衣料が並ぶこの店はクレジットカードが使えるが、現金払いに5%の独自ポイントを付けているため、現金払いが90%を占める。

 「店が負担するカード決済手数料は3%台後半と高く、その分、現金払いにポイントを付けてきた。政府案は、顧客にポイントが還元されるだけで店にメリットはないが、決めるのは客。これでキャッシュレス決済が増えるだろうから対応するしかない」(同社社長)

同床異夢の財務省、経産省、官邸

 前出のスーパー・アキダイは、11月末に店長会議を開いてキャッシュレス決済の導入を検討したが、答えは出なかった。

 「1円、2円の値付けで必死なのに、3%の手数料を取られれば利益が出なくなる。毎日、現金で売って現金で仕入れているので、カード決済となれば、資金繰りが圧迫される。しかし、キャッシュレス決済を導入しなければ、客が他店に流れてしまう」(秋葉社長)

 ポイント還元策は痛税感の緩和や低所得者救済など、増税対策の本来の目的とは懸け離れようとしている。

 クレジットカード業界は、「ポイント還元するシステム構築の負担」に加え、政府が決済手数料の上限設定を求めたことに反発したが、安倍首相が5%還元を口にして風向きが一変した。

 
 

 「還元率が5%まで上がれば、キャッシュレスが一気に進む。中小店舗の加盟を増やせるし、5%還元をやめた途端に売り上げが急減するので、政府はそのまま続けるか、代替策を取らざるを得ない、という根拠なき期待が高まった」(業界コンサルタント)

 中小企業を翻弄(ほんろう)している増税対策は、歯止めが利かなくなっている。

 「今回こそ増税を果たしたい財務省。増税に乗じてキャッシュレス普及を図る経済産業省。何よりも19年の選挙へ向けた安倍政権のばらまき……同床異夢で増税対策が打ち出され、増税効果が消し飛ぶ」(証券エコノミスト)

サプライズで増税延期の観測も

 東京商工リサーチが10月半ばに公表した「消費増税に関するアンケート」の結果が、反響を呼んでいる。増税が1年後に迫ったにもかかわらず、6627社の中小企業の実に6割が、増税に対して「準備していない」と回答したのだ。

 「増税実施を信じていない面もあるが、中小企業は人手不足や資金の問題が深刻で、積極的に準備する余裕がない」(原田三寛・東京商工リサーチ情報部部長)

 また、現在も消費増税ができる環境ではないという声は多い。「前回8%に上がった後、来客が日曜日の特売日に集中して、平日の売り上げが落ちるようになった。この状態は今も続き、8%に上げる前の消費水準に戻っていない」(前出・秋葉社長)。「増税対策は問題ない」という大手外食チェーンの担当者も、「本当に増税するかどうか?」と、実は疑心暗鬼だ。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏はきっぱり、こう言い切る。

 「総裁選で地方票が石破(茂)元自民党幹事長に流れ、沖縄では選挙3連敗で、安倍首相は地方の支持を失っている。増税は地方のほうが打撃になるため、選挙を考えれば増税できるはずがない。19年の選挙の前に、増税延期のサプライズを演出するつもりだと思う」

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 この記事は、週刊エコノミスト12月25日号の巻頭特集「日本経済総予測2019」をウェブ用に編集したものです。連載「週刊エコノミスト・トップストーリー」は原則、毎週水曜日に掲載します。

  <週刊エコノミスト12月25日号

 
 

エコノミスト編集部

藤枝克治編集長率いる経済分野を中心として取材、編集するチーム。経済だけでなく社会、外交も含め幅広く取材する記者の集団であり、各界の専門家にコラムや情報提供を依頼する編集者の集団でもある。