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「月桂冠」大倉家“皇室御用達”のブランド戦略

森岡浩・姓氏研究家
月桂冠のカップ酒=2018年12月22日、田中学撮影
月桂冠のカップ酒=2018年12月22日、田中学撮影

 京都市伏見区の京阪本線中書島(ちゅうしょじま)駅から歩いて北に5分ほどのところに「月桂冠大倉記念館」がある。明治42(1909)年建造の酒蔵を活用した建物で、この中で月桂冠の酒造りの歴史を見ることができる。「大倉」というのは、月桂冠を経営する一族だ。

祖は藤原の一族

 大倉家の歴史は古い。平成11(1999)年に刊行された「月桂冠資料集」の冒頭に「大倉氏世系之図」が収められている。これによると、藤原北家魚名(うおな)流の一族で、平安時代後期に藤原為経(ためつね)が源義朝(頼朝の父)に仕えて相模国鎌倉郡大倉荘(神奈川県鎌倉市)に住んで大倉氏を称したのが祖とある。

 為経は平治の乱で源義朝に従って京都で戦死した。その後、大倉氏は室町時代に大和国(奈良県)で十市(とおち)氏に仕え、応仁の乱(1467~77年)で細川勝元の下で軍功をあげたことから山城国笠置(かさぎ)荘(京都府笠置町)の地頭職を賜り、さらに天正14(1586)年に大倉隆益が、領主の筒井定次から500石を賜って笠置に住んだのが笠置の大倉家の始まりである。

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姓氏研究家

1961年、高知県生まれ。早稲田大学在学中に独学で姓氏研究を始める。文献調査やフィールドワーク、統計を用いた実証的手法を用いる。2017年4月からNHK「人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!」に出演。著書、多数。