
平成とはどういう時代だったのか。そんな問いかけがいろいろなメディアで目立つようになった。元号で時代を考えるのは日本人の心情で、次代を展望するためにも、この30年について思いをはせるのは意義のあることだろう。
振り返れば、暗い話題の多い日々だった。バブルの崩壊、阪神大震災、オウム真理教による地下鉄サリン事件、アメリカでの同時多発テロ、リーマン・ショック、東日本大震災。グローバル化が進み、ネットが広がり、格差が拡大し、少子高齢化と東京一極集中が進んだ。医療から人工知能(AI)まで科学技術の発達が加速度的に進んでいるようにも見える。
そんな時代を精神面、特に宗教の側面からとらえようとしたのが「平成論 『生きづらさ』の30年を考える」(NHK出版新書)だ。著者は池上彰、上田紀行、中島岳志、弓山達也。ジャーナリズム、宗教学、政治思想など、専門はさまざまだ。
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重里徹也
文芸評論家、聖徳大教授
1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。