辻野晃一郎の「世界と闘え」

東大卒女性浪曲師がNY公演を実現できた「仕掛け」

辻野晃一郎・アレックス株式会社代表取締役社長兼CEO
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浪曲師の春野恵子さん=春野恵子さん提供
浪曲師の春野恵子さん=春野恵子さん提供

 筆者が経営するアレックス(株)では、事業の一つとしてクラウドファンディングのサービスを提供している。今回は、同サービスを初期の段階で使ってもらい、その後、世界で活躍している女性を紹介したい。

 その方の名前は春野恵子さん。東大卒の才媛で、かつて日テレ系列の人気番組「進ぬ!電波少年」の「電波少年的東大一直線」という企画で、「家庭教師・ケイコ先生」として人気を博した女性と言えば思い当たる人もいるだろう。

 彼女はその後、日本の伝統芸能の一つ「浪曲」に目覚めて人生を大きく転換させた。三味線とともに物語を語る浪曲こそが「ひとりミュージカル、ひとりオペラ」として日本が世界に誇る伝統的なエンターテインメントで、自分の人生を懸けるものだと確信したという。何度断られてもあきらめずに大阪の女流浪曲師の第一人者・二代目春野百合子氏に弟子入りを頼み込み、ついには頭を丸めて覚悟を示し何とか入門を許してもらったそうだ。

 その後、修業を積んだ春野さんは、浪曲を世界に広めるための行動を開始する。現代風のオリジナル演目を創作したり、伝統的な演目を英語に直したりして、まずニューヨークで浪曲公演の世界デビューを果たすことを計画した。当社のクラウドファンディングで2013年に目標金額の300万円をはるかに上回る約560万円の資金調達に成功し、翌年、その資金を活用してニューヨークを皮切りにベルリンや中国のアモイなどにも遠征し…

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辻野晃一郎

アレックス株式会社代表取締役社長兼CEO

1957年福岡県生まれ。84年、慶応義塾大学大学院工学研究科を修了し、ソニー入社。VAIOなどの事業責任者、カンパニープレジデントを歴任。2007年、グーグルに入社し、その後、グーグル日本法人代表取締役社長に就任。10年4月にグーグルを退社し、アレックス株式会社を創業。著書に「グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた」(新潮社)、「リーダーになる勇気」(日本実業出版社)、「『出る杭』は伸ばせ! なぜ日本からグーグルは生まれないのか?」(文芸春秋)などがある。