
山梨県や長野県、さらに群馬県には「信玄の隠し湯」といわれる温泉がいくつもある。正確に数えたことはないが、20から30はありそうで、そのうちのいくつかは私自身も入ったことがある。たしかに、武田信玄・勝頼が支配した地域なので、戦国時代から存在が確認される温泉はその可能性があるが、近代になって、名将信玄の名にあやかって、勝手に「信玄の隠し湯」と称したところもあるかもしれない。
とはいえ、たしかな文献によって「信玄の隠し湯」だったことが証明される温泉もある。たとえば、現在甲府市の湯村温泉は、かつて志摩の湯とか島の湯といわれ、信玄自身が入浴し、傷の治療をしたことが「甲陽軍鑑」にみえる。
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小和田哲男
静岡大学名誉教授
戦国大名・今川氏のお膝元で、徳川家康の隠居先でもあった静岡市で1944年に生まれる。72年、早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。専門は日本中世史。戦国時代史研究の第一人者として知られ、歴史番組でおなじみの顔。趣味は「城めぐり」で、公益財団法人「日本城郭協会」の理事長も務める。主な著書に「戦国の群像」(2009年、学研新書)、「黒田官兵衛 智謀の戦国軍師」(13年、平凡社新書)。公式サイト https://office-owada.com