「自己保身社会」の現実

不公平社会を生きるための「あきらめと割り切り」

片田珠美・精神科医
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 ものすごいストレスにさらされていながら、びくともしない人がいる一方、些細(ささい)なストレスでうつやパニック障害を発症する人もいる。こうした違いは、精神医学的には「脆弱性(ぜいじゃくせい)」という言葉で説明され、もともとの性格や考え方、家庭環境や周囲のサポートなどの要因が影響すると考えられている。

 もともとの性格や考え方は本人の問題だが、家庭環境や周囲のサポートはかなり運・不運に左右される。たとえば、幼い頃から虐待やネグレクト(育児放棄)を受けてきた人は、両親の温かい愛情に包まれて育った人と比べて自己評価が低く、「どうせ自分はダメだ」と思いやすいせいか、ちょっとしたストレスで心の病になりやすい。

 当然、被害者意識と怒りを抱きやすい。それがわざわいして人間関係がこじれることも少なくない。親を選んで生まれてこられるわけではないので、どんな家庭に生まれるかは運次第だろう。

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片田珠美

精神科医

 広島県生まれ。大阪大学医学部卒。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。パリ第8大学精神分析学部で学ぶ。精神科医として臨床に携わり、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析的視点から研究している。「他人を攻撃せずにはいられない人」(PHP新書)、「高学歴モンスター」(小学館新書)など著書多数。