「自己保身社会」の現実

「夫への怒り」を弱者にぶつける40代主婦の“腹の内”

片田珠美・精神科医
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<事例編>

 知り合いの40代の専業主婦は愚痴をこぼしてばかりいて、飲食店や美容院などの店員の態度や言葉遣いに難癖をつけては怒鳴り散らす。しかも、自分が店員を怒鳴りつけたことを自慢げに話すのだが、その根底には夫への怒りが潜んでいるように見える。

 夫は高学歴で高収入だが、若い頃から浮気を繰り返し、この女性が問い詰めると「食べさせてやっているんだから、文句を言うな」という言葉が返ってくるらしい。だから、夫に怒りを伝えられず、その矛先を弱い立場の店員に向け変えるしかない。

 なぜ夫に対して怒りを出せないのかといえば、怖いからだ。何よりも怖いのは、変に問い詰めると、夫が逆ギ…

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片田珠美

精神科医

 広島県生まれ。大阪大学医学部卒。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。パリ第8大学精神分析学部で学ぶ。精神科医として臨床に携わり、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析的視点から研究している。「他人を攻撃せずにはいられない人」(PHP新書)、「高学歴モンスター」(小学館新書)など著書多数。