ニッポン金融ウラの裏 フォロー

銀行が庶民に嫌われる理由“二つの事例”で考えてみた

浪川攻・金融ジャーナリスト
 
 

 銀行の個人ローン戦略は整合性がとれているのか。今回は、各銀行が注力する個人ローン営業を借り手の側からみた場合に、どのような事態が生じているのかを取り上げてみたい。銀行は顧客本位といいながら、なかなかローン分野ではそれを具体化できないでいるように思える。

借り換えを勧めるチラシ

 飲食業を営む女性の話から紹介したい。彼女は大企業に勤めていたが、10年前に退社した。夢だった飲食業の店を構えるためだ。そして、実現した。店は得意客を得て繁盛している。あるときから、東京都内の自宅マンションに大手銀行のダイレクトメールがひんぱんに送られてくるようになった。「いまの住宅ローンを低利ローンに借り換えましょう」という内容のチラシである。

 そこで、チラシを持参して住宅ローンを借りている銀行を訪れた。「ローン借り換えセミナー」で話を聞いた後、相談窓口に行き「借り換えたいのですが」と担当者に話した。初めのうち、担当者はニコニコ顔だったが、彼女が大手企業を辞めて自営業に変わっていることを知ると、にわかに態度が変わった。「自営の人にはちょっとローン実行はむずかしいのですよ」という返事である。

この記事は有料記事です。

残り702文字(全文1190文字)

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。