藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

「覇権争いの海」ジブラルタル海峡をフェリーで行く

藻谷浩介・地域エコノミスト
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タリファからタンジェ旧港へ渡る高速フェリー。大勢の客が席に座らずに海風に当たっていた(写真は筆者撮影)
タリファからタンジェ旧港へ渡る高速フェリー。大勢の客が席に座らずに海風に当たっていた(写真は筆者撮影)

 欧州とアフリカが最も接近するジブラルタル海峡。欧州側はスペインだが、その中のジブラルタル半島だけは英国領だ。アフリカ側はモロッコだが、同じく小さな半島にあるセウタの町だけがスペイン領である。この入り組んだ地域の実態はどうなっているのか。スペイン側のアルヘシラスの宿に荷物を置き、アフリカ側への日帰りを試みる。

 2017年の5月初旬、夜20時半。ロンダ駅からの標高差700メートル超を1時間半で降り、たどり着いた港町・アルヘシラスの駅は、終端式ホーム2本の簡素な造りだった。スペイン南端のこのあたりでは、海岸沿いに鉄道は通っておらず、この駅も1日数本のマドリード方面への特急専用という感じだ。

 駅前のホテルに荷物を置き、港の方まで歩いてみる。アルヘシラスは観光都市かと思っていたが、実際にはコンテナ港を中心とした物流の町で、駅周辺の市街地は歩行者も少なく殺風景だった。裏路地には若干の飲食店があり、アラビア語を掲げた中東料理の食堂もある。店主も若干名の客も、モロッコからの移民のように見えた。

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。