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50代からの投資でも「資産寿命」を伸ばすには

エコノミスト編集部
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 資産投資は、50代からでも60代からでも遅くはない。これまでの蓄えや退職金を、将来に備えて少しずつ投資に切り替えていく方法もある。週刊エコノミスト5月21日号の巻頭特集「まだ間に合う!50代からの投資」の正岡利之・MUFG資産形成研究所長のリポートをダイジェストでお届けする。

投資を始めるのに「遅すぎる」はない

 「資産の一部を投資にまわしたいが、年齢的にもう遅いのではないか」

 投資セミナーで講師をしていると、50代からこんな声を聞くことが少なくない。投資や運用する年齢を20~40代という先入観を持っている人が意外に多いようだ。

 しかし実際には、「投資をやめる最適年齢は〇〇歳」という明確な目安があるわけではない。例えば60歳でもまだ「中長期的に投資すること」は可能だ。当研究所の行ったアンケートによると、「自分が思っている以上に、実際には長生きする人が多い」ことがわかる。「自分が何歳まで生きると思うか(生命寿命)」という質問に、男女とも実際の平均寿命よりも短めに回答する傾向があった。

 厚生労働省の「2017(平成29)年生命簡易表」によると、90歳で存命の男性が4分の1、女性が2分の1という。そうした現実を考えると、60歳でもまだ「いままでの人生の半分」が残っている人が思いのほか多いのだ。

 
 

 一方で、「健康でいられる年齢(健康寿命)」は実際に健康な年齢よりも、長く見積もる傾向がある。平均値との比較だが、考えているより生命寿命は長く、期待しているほど健康寿命は長くなさそうだ。

健康なうちに将来に備える

 そこで、健康なうちにさまざまな備えを検討する必要がある。その一つとして家計については、一部を投資信託など成長によるリターンが期待できる資産に分散して保有することは、その成果によって将来の生活に余裕を生む機会を得る、という観点で検討に値する。

 例えば、60歳から投資を始めて10年後の70歳から取り崩すとしても、10年間の投資が可能だ。

 ただし、その際に重要なのは投資金額の決め方である。生活に必要な資金に影響しない、無理のない範囲で、投資額を設定することが重要だ。そうすれば、株や投信などに投資して、仮にそれらの価格が上下に振れても、あまり気にすることなく投資を続けられる。つまり、「そのままにしておける投資金額」を設定することが大切だ。

 いつ始めるのか迷うのであれば、これまでの蓄えや退職金など手元のまとまった資金を少しずつ、まるで「積み立て」のように時間を分けて、定期的に投資に振り替える方法が有効だろう。難しい投資のタイミングに頭を悩ますより、特に投資経験が少ない場合には、毎月一定額を投資するほうが、気持ちの面で余裕がもてる。

 退職金をまとめて一気に投資する初心者が少なからずいるようだが、50~60代からまとまった資金で積み立て投資は十分に可能だ。

10年間運用収益318万円と1万円の差

 実際に毎月10万円を国内株、国内債券、外国株、外国債券に、均等(4分の1ずつ、つまり2.5万円ずつ)の積み立て投資を行った場合(各資産のインデックス投信を想定)、2008年のリーマン・ショックを含む過去の20年間での実績をみても、4.6%の利回りを確保している。10年間の運用収益を計算すると318万円。定期預金の場合は1万円でしかない。

 
 

 最後に、将来おカネが必要になったときには、運用しながら引き出すことも可能だ。定期的に引き出すのであれば、一定の金額を引き出すのが一般的である。しかし、この方法だと、投資資産の時価残高が下がったときに、実力以上の金額を引き出すことになる。その分、投資残高が減るので、その後の戻り相場で得られる利益が少なくなる。

 具体的に説明しよう。前提は1000万円の資金を運用しながら毎年一定額の100万円を引き出す場合だ。図の上段は、1年目の市場収益(リターン)が30%、2年目を15%、3年目をマイナス30%とする。すると、1年目の時価残高は1200万円、2年目の時価残高は1280万円、3年目は796万円。

 
 

 同じように毎年100万円を取り崩すが、リターンが1年目マイナス30%、2年目が15%、3年目が30%となった場合に問題が発生する。1年目の時価残高が600万円に減少してしまう。すると、2年目以降のプラスのリターン時にリターン幅が小さくなり、3年目の時価残高は667万円に目減りする。

 そこで、引き出す金額を時価残高の一定比率とする方法が有効だ。相場下落で時価残高が減少したときには、引き出す金額が少なくなる。逆に、時価残高が多くなったときには大きな金額を引き出せる。

 3年間の市場リターンが同じ場合、一定比率で引き出すと、3年後の時価残高は同じ763万円だ。時価残高に応じた取り崩しをすることで、相場が上下する順番が運用パフォーマンスに影響しなくなる。取り崩し運用を始めてすぐに相場が下落しても、定額引き出しと比較して財産の保全が図れる。

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 この記事は、週刊エコノミスト5月21日号の巻頭特集「令和の日本経済大予測」をウェブ用に編集したものです。連載「週刊エコノミスト・トップストーリー」は原則、毎週水曜日に掲載します。

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エコノミスト編集部

藤枝克治編集長率いる経済分野を中心として取材、編集するチーム。経済だけでなく社会、外交も含め幅広く取材する記者の集団であり、各界の専門家にコラムや情報提供を依頼する編集者の集団でもある。