メディア万華鏡

改元で騒ぎ「天皇制」論じないメディアの“思考停止”

山田道子・元サンデー毎日編集長
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天皇陛下の即位を祝う一般参賀に臨まれた天皇、皇后両陛下と皇族方=皇居・宮殿で2019年5月4日、佐々木順一撮影
天皇陛下の即位を祝う一般参賀に臨まれた天皇、皇后両陛下と皇族方=皇居・宮殿で2019年5月4日、佐々木順一撮影

 退位・即位をめぐる騒動が一段落したが、事ここに至る報道に「なんだかな~」という感がぬぐえない。先の天皇、皇后両陛下は、平和を希求し国民に寄り添う平成の象徴天皇制を作り上げた立派な方という報道がほとんどの印象だ。1989年1月に昭和天皇が亡くなられる前後、私は社会部で取材していたが、天皇制についてもっと詰めた報道があったような記憶がある。

 だから今、新聞は怒られている。メディア学者の石田英敬氏は、民主主義の国なのに天皇は基本的人権が制限され、その犠牲によって国民が統合されている天皇制をめぐる根本的な問題に新聞が切り込むべきだと叱る(朝日新聞5月11日朝刊)。放送大教授の原武史氏に至っては「象徴天皇制の課題を検証せず、浮かれるだけでいいのか。あなたがたメディアは大日本帝国時代と同じです」(毎日新聞ウェブサイト5月14日)と激怒だ。

 個人的には毎日新聞の2017年5月21日の朝刊の記事を思い出す。天皇陛下の退位を巡る政府の有識者会議で、16年11月のヒアリングの際に保守系の専門家から「天皇は祈っているだけでよい」などの意見が出たことに、陛下が「ショックだった」との強い不満を漏らされ、それは宮内庁関係者を通じて首相官邸に伝えられたという内容。不満が官邸に伝えられることは憲法の観点からどうなのかについて記事に言及はなかった。両陛…

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山田道子

元サンデー毎日編集長

1961年東京都生まれ。85年毎日新聞社入社。社会部、政治部、川崎支局長などを経て、2008年に総合週刊誌では日本で最も歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長、紙面審査委員。19年9月退社。