ベストセラーを歩く

本屋大賞「そして、バトンは渡された」幸せな家族とは

重里徹也・文芸評論家、聖徳大教授
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2019年本屋大賞を受賞し、トロフィーを手に笑顔を見せる作家の瀬尾まいこさん=2019年4月9日、藤井達也撮影
2019年本屋大賞を受賞し、トロフィーを手に笑顔を見せる作家の瀬尾まいこさん=2019年4月9日、藤井達也撮影

 詩人・小説家の辻井喬が講演で近代文学と現代文学の違いを語るのを聞いたことがある。1990年代前半のことだ。

 「個人が共同体から自立するのが近代文学、バラバラの個人が新しい共同体をつくろうとするのが現代文学」

 明快な解説で、記憶に残っている。確かにこの数十年に書かれた日本の小説を思い返しても、「新しい共同体」を模索する話は少なくない。「共同体」といえば堅苦しいが、「同居者」とか「まち」とかに言いかえればとっつきやすいだろう。家族や地域共同体をどうやって新しくつくり直すのか、というのは現代日本人にとって切実な課題なのだ。

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重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。