
平日に女性がワンオペ育児をする理由の一つは、夫の帰宅が遅いからです。帰りが遅い夫の状況や理由にはさまざまなパターンがあります。今回はその中でも、家で妻が早く帰ってきてほしいと願っているのに、子どものケアより上司のケアを優先して帰ろうとしない男性の事情を報告します。
上司の投稿に真っ先に返信
IT企業に勤める鈴木大輔さん(30代、仮名)には、夫の帰りを待つ共働きの妻と子どもがいます。鈴木さんもわが子をとてもいとしく思っていますが、それでも会社に残ることを選んで、毎日遅くまで家に帰りません。なぜなら鈴木さんは仕事で成功したいと強く願っていて、上司の評価がとても気になるからです。
鈴木さんがかかわるプロジェクトチームは全員、Slack(スラック)というビジネスチャットツールで連絡を取り合っています。鈴木さんは常に、上司の書き込みに誰よりも早く絵文字で反応し、返信もするよう心がけています。というのも、上司は「すぐ返信しないやつは仕事ができない」とよく言っているからです。そのため1日中スマホから目を離せません。
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藤田結子
明治大商学部教授
東京都生まれ。慶応義塾大を卒業後、大学院留学のためアメリカとイギリスに約10年間滞在。06年に英ロンドン大学で博士号を取得。11年から明治大学商学部准教授、16年10月から現職。専門は社会学。参与観察やインタビューを行う「エスノグラフィー」という手法で、日本や海外の文化、メディア、若者、消費、ジェンダー分野のフィールド調査をしている。
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