名家のルーツ

「ワンカップ大関」大ヒット 西宮の酒造業・長部家

森岡浩・姓氏研究家
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1964年に発売後、瞬く間に大ヒット商品となった「ワンカップ大関」=田中学撮影
1964年に発売後、瞬く間に大ヒット商品となった「ワンカップ大関」=田中学撮影

 日本酒を飲まない人でも知っている銘柄に「大関」がある。「ワンカップ大関」というカップ酒が有名だ。醸造元は大関株式会社で、本社は兵庫県西宮市今津出在家(いまづでざいけ)町にある。ここは、関西の酒どころ灘五郷(神戸市、西宮市)の一つ「今津郷」に当たる場所だ。

社史は酒造業の研究書

 1996(平成8)年刊行の「大関二百八十年史」は、社史としてはいっぷう変わっている。通常、社史は会社の創業から自社の事業を中心に展開していく。特に江戸時代から続く会社の場合、創業間もないころはほぼ伝承の世界で、史的裏付けがどこまで取れているのか怪しいものがあるのが実情だ。

 「大関二百八十年史」は目次から違っている。第1編は「近代酒造業の史的展開」で、第2編は「近現代酒造業の展開」である。最初の40ページほどは大関は登場せず、今津郷の酒造業に関する論文で、社史というより研究書だ。執筆したのは関西学院大学学長を務めた柚木学氏以下、同大学の教授陣である。大関の歴史は、一企業のそれでなく、灘五郷「今津郷」の酒造業の歴史であるという自負がみてとれる。

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森岡浩

姓氏研究家

1961年、高知県生まれ。早稲田大学在学中に独学で姓氏研究を始める。文献調査やフィールドワーク、統計を用いた実証的手法を用いる。2017年4月からNHK「人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!」に出演。著書、多数。