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ファーウェイ創業者・任正非CEOが本社で黒鳥飼う理由

エコノミスト編集部
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毎日新聞などのインタビューに応じる中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の創業者で最高経営責任者(CEO)の任正非氏=中国・深圳の同社本社で2019年1月18日午後、赤間清広撮影
毎日新聞などのインタビューに応じる中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の創業者で最高経営責任者(CEO)の任正非氏=中国・深圳の同社本社で2019年1月18日午後、赤間清広撮影

 米国から敵視、排斥されながら、成長を続ける中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)。一代で作り上げた任正非氏とは、一体どのような人物なのか。週刊エコノミスト7月16日号の巻頭特集「ファーウェイ大解剖」より、シグマ・キャピタルの田代秀敏チーフエコノミストのリポートをダイジェストでお届けする。

極貧の暮らしが生んだ不屈の精神

 任氏は1944年10月25日、南中国の内陸部の貴州省の山深い、安順市鎮寧プイ族ミャオ族自治州で、漢民族の7人兄弟の長男として生まれた。両親は当時の中国で最下層職業であった学校教師であり、極めて薄給であった。食うや食わずの極貧の暮らしが任氏の不屈の精神を育んだ。

 任氏は63年に重慶建築工程学院(現在は重慶大学と合併)に入学したが、その後文化大革命(文革)が始まり、国民党軍の工場に勤務した経歴がある父親は暴力的なつるし上げの対象となった。

 重慶での激烈な武力闘争から逃れ、ほうほうの体で帰省した任氏を、父親は「知識は力だ。流されずに勉強しろ」と、追い返した。重慶に戻ると「弾丸が飛び交う」状態であったが、任氏は建築学の他に、コンピューター、応用数学、自動制御理論、哲学、三つの外国語などを独学した。

人民解放軍の部隊に配属

 しかし「どこに行っても逆境に置かれていた」と回顧している通り、任氏は中国共産党の党員育成団体である中国共産主義青年団(共青団)になかなか入団できず、入党も長く許されなかった。

 任氏は67年に卒業したが、文革による混乱により68年に、人民解放軍の社会インフラ整備・工業プラント建設・鉱山開発の施工部隊である基本建設工程兵団に配属された。副団長クラスまで昇進したが、一度も褒賞されなかった。

中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の本社=中国・深圳で2018年9月26日、赤間清広撮影
中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の本社=中国・深圳で2018年9月26日、赤間清広撮影

 文革が終わって2年後の78年、全国科学大会で受勲したことでようやく入党できた任氏は、当時の妻であった孟軍氏の父親の縁故で82年の党大会に代表の一人として招かれた。だが、84年に軍の大規模リストラで基本建設工程兵団が廃止されたのに伴い軍を退役させられた。

 任氏は、当時の妻の父親が経営幹部を務めていた国営企業「深セン南油集団」の子会社の社長に就いた。しかし、百数万元の会社財産をだまし取られ解雇されただけでなく、党内でも処分を受けた。その後、「仕事がうまくいかず、生き延びるためにファーウェイを創業した」と任氏は述べている。こうした経歴が任氏を「危機管理の権化」に鍛え上げた。

 任氏は「ファーウェイ基本法(経営理念)」第98条で「会社が危機に置かれている時は、危機に直面しているとともにチャンスにも直面している」と述べ、危機を発展の原動力としている。そして、「危機管理の目標は危険をチャンスに変えて、会社が陥穽(かんせい)を越えて新しい成長段階に入るようにすることである」とする。

「神も仏も頼りにしない。すべて自分次第」

 「この世に救世主なんていない。神様も仏様も頼りにしない。新たな生活の創造は、すべて自分次第なのだ」。94年に北京で開催された展覧会でファーウェイのブースに掲げた標語の通り、任氏は党・政府の役職に一切就かず、経営に専念してきた。

 任氏は、「最大の苦しみは融資が受けられなかったことだ。私個人の収入はすべて会社の未来に投資してきた」と振り返っている。

 任氏は、地域の業界の最高水準より高い平均年収を保証して一流の人材を集めている。終身雇用制を取らないと宣言し、基本給を能力主義的職能給制度で調整し、中堅以上の従業員には議決権のない「ファントム株(架空株)」の増資分を各自の成果に比例して購入させ、会社の資金調達の手段としている。

 危機管理の権化である任氏は、ファーウェイ本社ビルの前の池に豪州から輸入した黒鳥を飼い、「ブラックスワン(想定外の事態)は今そこにある」と従業員に示している。その任氏の現在(3番目)の妻との間の次女は米ハーバード大学に留学中だ。最初の妻との間の長女のように拘束されることはないと、任氏が確信する理由は不明である。

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 この記事は、週刊エコノミスト7月16日号の巻頭特集「ファーウェイ大解剖」をウェブ用に編集したものです。連載「週刊エコノミスト・トップストーリー」は原則、毎週水曜日に掲載します。

週刊エコノミスト7月16日号

 
 

エコノミスト編集部

藤枝克治編集長率いる経済分野を中心として取材、編集するチーム。経済だけでなく社会、外交も含め幅広く取材する記者の集団であり、各界の専門家にコラムや情報提供を依頼する編集者の集団でもある。