サイバー攻撃の脅威

ウイグル旅行者が持たされる監視アプリ「蜂采」とは

松原実穂子・NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト
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中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市内で2019年6月24日、工藤哲撮影
中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市内で2019年6月24日、工藤哲撮影

 中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで2009年7月5日に起きた「ウルムチ暴動」から10年がたった。漢族と、少数民族でイスラム教徒のウイグル族が衝突し、中国当局は死者197人、負傷者1721人と発表している。だが世界ウイグル会議は暴動後、ウイグル人1万人が姿を消したと訴えている。

 中国のウイグル人、チベット人への人権侵害に世界の関心は高まっている。国連人種差別撤廃委員会は18年、最大100万人のウイグル人が強制収容所に入れられていると報告した。中国政府は事実無根と主張している。6月に大阪市で行われた日中首脳会談でも、安倍晋三首相がウイグル人の人権問題に言及した。

 中国政府によるウイグルとチベットの活動家や、ジャーナリストへのサイバー攻撃は、世界のサイバーセキュリティー企業によってたびたび報告されてきた。活動家の情報をサイバー攻撃で盗んだり、スマホのアプリを利用したりして、ウイグル人やチベット人の個人情報を収集しているとみられている。

 米ニューヨーク・タイムズ紙、英ガーディアン紙などは7月2日付で、新疆ウイグル自治区に入る旅行者のスマホに、中国国境警察が監視アプリを入れていると報じた。大手国際メディア複数社の共同調査に基づき、各社が記事を掲載した。国境警察が、キルギス共和国から入国する旅行者にスマホの起動を求め、事前承諾なしに「蜂采」(ハチを集めるという意味)という名前のアプリを入れるという。

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松原実穂子

NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト

早稲田大学卒業後、防衛省で9年間勤務。フルブライト奨学金により米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で修士号取得。その後、米シンクタンク、パシフィックフォーラムCSIS(現パシフィックフォーラム)研究員などを経て現職。国内外で政府、シンクタンクとの意見交換やブログ、カンファレンスを通じた情報発信と提言に取り組む。