
新築分譲マンションの契約率が低下し、「マンションが売れなくなった」「バブル崩壊が始まった」という趣旨の記事が増えている。しかし、不動産業界はこの状況を冷静に受け止めており、もはや契約率にこだわる時代ではない、という声もある。その理由を説明したい。
「70%割れは不調」は紋切り型
分譲マンションの契約率とは、不動産経済研究所が発表している初月契約率を指す。簡単にいうと、販売を開始した最初の月にどれだけ売れたか、という数値だ。たとえば、6月に第1期販売として100戸を売り出したマンションがあるとする。その100戸のうち、70戸に購入申し込みが入ると、契約率70%になる。マンション市場全体でみて、発売戸数に対する売却戸数の割合が初月契約率となる。
この初月契約率は、70%が好不調の目安とされている。70%を超えれば、好調に売れている。しかし、70%を下回れば、不調というわけだ。
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櫻井幸雄
住宅ジャーナリスト
1954年生まれ。年間200物件以上の物件取材を行い、首都圏だけでなく全国の住宅事情に精通する。現場取材に裏打ちされた正確な市況分析、わかりやすい解説、文章のおもしろさで定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞、日刊ゲンダイで連載コラムを持ち、週刊ダイヤモンドでも定期的に住宅記事を執筆。テレビ出演も多い。近著は「不動産の法則」(ダイヤモンド社)。