
50歳になったころからだろうか。あと何年生きられるのだろうと考えるようになった。急に中学や高校の同窓会の誘いが増えた。みんな自分の人生がどんなものだったのか、ある程度、見えてきたような気がし、急に10代のころが懐かしくなったり、残りの人生をなんとか充実させたいと思ったりするのだろう。
情報交換もしたいし、本音の会話も楽しみたい。死んでいくやつだって、出てくる。がんとか、心臓病とか、交通事故とか。
若くはないけれど、まだ、老け込むには少し早い。何かをするには遅い気がするけれど、生きがいのようなものをちょっとは感じて死ぬまでを過ごしたい。一方で、経済的な不安は抱えている。子供のことで悩んだり、親の介護が必要だったりもする。現代において、50歳とはとても微妙な年ごろなのだ。
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重里徹也
文芸評論家、聖徳大教授
1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。