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黒田日銀の“サラミ戦術”はいつまで効果ある?

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
金融政策決定会合後に記者会見する黒田東彦・日銀総裁=東京都中央区で7月30日、尾籠章裕撮影
金融政策決定会合後に記者会見する黒田東彦・日銀総裁=東京都中央区で7月30日、尾籠章裕撮影

 日本銀行の黒田東彦総裁は、7月30日の金融政策決定会合の記者会見で、「景気の勢いが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加緩和する」と述べた。7月の金融政策決定会合では、この発言を公表資料に書き込んで「金融緩和を一歩進めた」としている。

 この発言を聞いたとき、筆者は「まるで“サラミ戦術”ではないか」と思った。サラミ戦術とは、サラミを薄く輪切りにするように、小出しに策を打っていく「時間稼ぎ作戦」だ。ハンガリーの政治家が交渉を有利に運ぶために用いたことに由来する。その戦術が今回成功したかどうかはまだ誰もわからないが、日銀はなぜそんなことをしているかという苦しい胸の内を解説してみよう。

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。