藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

ブカレストを歩き見た「独裁者チャウシェスク」の残影

藻谷浩介・地域エコノミスト
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議事堂宮殿。冷戦末期にチャウシェスク大統領が着工した、世界で2番目に大きい建物(写真は筆者撮影)
議事堂宮殿。冷戦末期にチャウシェスク大統領が着工した、世界で2番目に大きい建物(写真は筆者撮影)

 ルーマニア、すなわち「ローマ人の国」。ローマから遠く北東に離れたその首都ブカレストの町で見たのは、確かにスラブ系とは違う、ラテン系の顔立ちと性格を持つ人たちだった。30年前に世界を驚かせた、チャウシェスク独裁体制の崩壊のてんまつも、思えばラテン系特有の派手さを伴った政治劇だったのだろうか?

 どこか作り物のような雰囲気を持つブカレスト旧市街をさまよった後、筆者は、都心の南西方向に足を向けた。東西冷戦時代にこの国を牛耳ったチャウシェスク大統領が残した、世界最大級の建造物を見るためである。1984年に着工された当時の名称は「国民の館」で、使用目的は(名前に反して)チャウシェスク大統領一族の宮殿だったという。現在は「議事堂宮殿」という名称になり、国会議事堂として使われるほか、国立現代美術館が入居している。

 世界の200ばかりの国の中でも、国会議事堂と美術館が同居している例は珍しいだろう。延べ床面積33万平方メートル(日本の国会議事堂の6倍以上)、数千の部屋を埋めきれず、使われていない部分が多いらしい。

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。