藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

民族分断で成立「モルドバ」首都に観光名所見当たらず

藻谷浩介・地域エコノミスト
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広場に置かれた巨大なチェス盤で遊ぶ子どもたち(写真は筆者撮影)
広場に置かれた巨大なチェス盤で遊ぶ子どもたち(写真は筆者撮影)

 路傍を延々と埋める、ガラクタ品を売る露天市。カオスそのものの雑踏を見せるワゴンバスのターミナルや生鮮市場。欧州最貧国・モルドバの首都キシニョフで見た光景は、まるでインドか東南アジアのようだった。しかし歩くうちに“腐っても欧州”という姿も見えてくる。国の根っこを支える旧ソ連時代のインフラ投資はいつまで持つのか?

 庶民の息づかいが渦巻く市場を出た筆者は、まだ首都のシンボルたるべき空間を見ていないことに気が付いた。より閑静な南西方向に1~2ブロック歩くと、ステファン侯通りに出た。沿道の雰囲気は見違えるほど整然としている。

 通りを北西にたどると、ほどなく大きな広場の中に大聖堂が建っていた。通りに近い方に特徴的なデザインの鐘楼があり、その間に大きな野外チェス盤があって、子どもたちが遊んでいる。清潔で文化的な、いかにも都心のシンボルたりうる空間だ。後日調べてみると、モルドバ正教の本山・ナスレテア大聖堂だった。

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外109カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。