サイバー攻撃の脅威

ワナクライ感染を防いだ“若き英雄”の逮捕と情状酌量

松原実穂子・NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト
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 2017年8月、23歳の英国人の男が米ラスベガス空港で米連邦捜査局(FBI)に逮捕され、起訴された。男は、サイバーセキュリティー研究者のマーカス・ハッチンス被告といい、ラスベガスで開かれたセキュリティーに関する国際会議に参加し、帰国するところだった。

 逮捕容疑は、12年から15年にかけて、インターネットバンキングのユーザー名やパスワードを盗むウイルスを作り、ネット上の“闇市場”で売っていたというものだ。このウイルスは英国、カナダ、ドイツ、ポーランド、フランス、インドなどで悪用され、被害を出した。

 ハッチンス被告の逮捕・起訴は大きな論議を呼んだ。同被告はサイバーセキュリティーの世界で英雄視された人物だったからだ。

 逮捕から3カ月前の17年5月、「ワナクライ」と呼ばれる身代金要求型ウイルスが世界150カ国で猛威をふるった。日立やホンダなど日本企業のコンピューターもウイルスに感染し、メールが使えなくなる、工場の操業が停止に追い込まれるといった被害が出た。「ワナクライ」は「泣きたい」という意味だ。

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松原実穂子

NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト

早稲田大学卒業後、防衛省で9年間勤務。フルブライト奨学金により米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で修士号取得。その後、米シンクタンク、パシフィックフォーラムCSIS(現パシフィックフォーラム)研究員などを経て現職。国内外で政府、シンクタンクとの意見交換やブログ、カンファレンスを通じた情報発信と提言に取り組む。