ベストセラーを歩く

芥川賞「むらさきのスカートの女」迷宮のような読後感

重里徹也・文芸評論家、聖徳大教授
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 芥川賞を受賞した今村夏子「むらさきのスカートの女」(朝日新聞出版)は二つのきわだった特徴を持つ小説だ。一つはきわめて奇妙な作品であること。物語に付き合っていると、どんどんと変な方へ変な方へよれていく感覚だ。

 日常のすき間のようなところにはまってしまって、出られなくなる迷宮のような感じといえばいいか。私たちの生きている世界からこぼれてしまうような脱落感といえばいいか。それは日々の生活を相対化して見渡す視点を私たちにもたらすようにも思う。

 特徴のもう一つは、とても読みやすい文章で書かれていることだ。芥川賞受賞作というと凝った文章が少なく…

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重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。